非特異的腰痛とは?|「原因不明」と言われる腰痛を整理する

非特異的腰痛について理学療法士が説明しているイメージ

「MRIでは異常なしと言われた」
「ヘルニアはあるけど、それが原因かは分からないと言われた」
「結局、何が悪いの?」

そんな経験はありませんか?

実は腰痛の多くは、
「非特異的腰痛(Non-Specific Low Back Pain:NSLBP)」
という分類に入ります。

しかし、
この“非特異的”という言葉が、

「原因不明」
「気のせい」
「異常なし」

のように誤解されてしまうことも少なくありません。

現在の腰痛研究では、
腰痛は単純に「骨がズレている」「筋肉が硬い」だけでは説明できないことが分かってきています。

この記事では、

  • 非特異的腰痛とは何か
  • なぜ画像だけでは説明できないのか
  • 現在の腰痛研究で何が重要視されているのか

を、最新エビデンスをもとに整理していきます。


非特異的腰痛とは?

腰痛について悩みながら説明を受けている人物

非特異的腰痛とは、

「明確な単一原因を特定しきれない腰痛」

のことです。

例えば、

  • 骨折
  • 感染
  • 重度神経障害

などの「特異的な原因」が確認できない腰痛が、この分類に入ります。

そして実際には、
腰痛の多くが非特異的腰痛に分類されるとされています【文献①】。

ただし重要なのは、

「異常がない」

という意味ではないことです。

現在では、
腰痛には、

  • 身体の使い方
  • 神経系の過敏性
  • 姿勢
  • 呼吸
  • 睡眠
  • ストレス
  • 身体活動量
  • “動くことへの不安”

など、多くの要素が関与すると考えられています。


「原因不明」という意味ではない

腰痛と神経・ストレス・生活背景の関係を整理しているイメージ

以前は、

「腰が壊れているから痛い」

という“構造モデル”が中心でした。

しかし現在の高品質エビデンスでは、

  • 神経系
  • 行動
  • 感情
  • 生活背景

なども含めた、
「生物心理社会モデル」が重要視されています【文献①】【文献③】。

つまり現在の腰痛研究では、

「腰だけを見れば良い」

とは考えられていません。

例えば、

  • 痛みへの不安
  • 過去の痛み経験
  • Fear Avoidance(恐怖回避)
  • 睡眠不足
  • ストレス
  • 活動量低下

などによって、
神経系が過敏になり、
痛みが長引くケースもあります。

そのため、

「画像に異常がない=問題ない」
でもなく、

「画像に異常がある=それが原因」
とも限らないのです。


画像だけでは説明できない理由

MRI画像を見ながら腰痛について相談している人物

腰痛でMRIやレントゲンを撮影すると、

  • ヘルニア
  • 椎間板変性
  • 狭窄
  • すべり症

などを指摘されることがあります。

しかし実際には、
症状がない人にも、
これらの画像異常は高頻度で見つかることが分かっています【文献⑤】。

つまり、

「画像異常=現在の痛みの原因」

とは限らないのです。

逆に、

「画像では異常なし」
でも、
強い痛みを感じる人もいます。

だからこそ現在では、

  • 画像
  • 動き
  • 神経症状
  • 日常生活
  • 不安感
  • 活動量

などを総合的に整理することが重要視されています。


現在の腰痛治療で重要視されていること

運動療法やセルフマネジメントについて説明する理学療法士

近年の高品質エビデンスでは、
非特異的腰痛に対して、

  • 運動療法
  • 教育
  • 認知行動療法(CBT)
  • Cognitive Functional Therapy(CFT)
  • セルフマネジメント

などが推奨されています【文献①】【文献③】【文献④】。

一方で、

  • 長期安静
  • オピオイド依存
  • ルーチンMRI
  • 受動的治療だけに頼ること

などは推奨されていません【文献①】【文献②】。

つまり現在では、

「痛みを完全にゼロにする」

ことだけではなく、

  • 安心して動けること
  • 恐怖回避を減らすこと
  • 自己効力感を高めること
  • 日常生活を取り戻すこと

が重要視されています。


Cognitive Functional Therapy(CFT)とは?

動作指導を行いながら腰痛改善をサポートしている場面

近年、特に注目されているのが
「Cognitive Functional Therapy(CFT)」です。

これは、

  • 痛み教育
  • 恐怖回避の修正
  • 動作再学習
  • 行動変容

を統合したアプローチです。

単なる筋力トレーニングではなく、

「なぜその動きが怖いのか」
「なぜ過剰に力が入るのか」
「どんな場面で痛みが出るのか」

まで整理していきます。

近年のRCTでは、
CFTは、

  • 疼痛
  • disability(機能障害)
  • fear avoidance(恐怖回避)

などを長期的に改善したと報告されています【文献⑥】【文献⑦】【文献⑧】。


「何をするか」より「何が関与しているか」が大切

腰痛の原因を多角的に整理している理学療法士

腰痛があると、

  • とりあえず腹筋
  • とりあえずストレッチ
  • とりあえず安静

になりやすいです。

もちろん、
それらが有効なケースもあります。

しかし実際には、

  • 神経系
  • 感覚
  • 呼吸
  • 安定性
  • 不安
  • 行動パターン

など、
さまざまな要素が関与していることがあります。

だからこそ大切なのは、

「何をするか」

の前に、

「今どんな状態なのか」

を整理することです。


まとめ

腰痛について理解し安心した表情を見せる人物

非特異的腰痛とは、

「原因不明の腰痛」

ではなく、

「単一の構造異常だけでは説明しきれない腰痛」

です。

現在の腰痛研究では、

  • 神経系
  • 行動
  • 心理社会要因
  • 活動量
  • 睡眠
  • 不安

などを含めた、
「生物心理社会モデル」が重視されています。

だからこそ、

  • 画像だけで判断しないこと
  • 必要以上に怖がりすぎないこと
  • “今の状態”を整理すること

が大切になります。

腰痛では、

「何をするか」

より、

「何が関与しているか」

を整理することが、改善への第一歩になります。

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参考文献

【文献①】
Briggs AM, et al.
The World Health Organization guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults.
Global Health Research and Policy. 2025.

【文献②】
Jones CMP, Underwood M, et al.
Analgesia for non-specific low back pain.
BMJ. 2024;385:bmj-2024-080064.

【文献③】
Jones CMP, Underwood M, et al.
Management of non-specific low back pain without drugs.
BMJ. 2025;391.

【文献④】
Cashin AG, Furlong BM, Kamper SJ, et al.
Analgesic effects of non-surgical and non-interventional treatments for low back pain.
BMJ Evidence-Based Medicine. 2025.

【文献⑤】
Brinjikji W, et al.
Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations.
American Journal of Neuroradiology. 2015;36(4):811–816.

【文献⑥】
O’Keeffe M, et al.
Cognitive Functional Therapy compared with a group-based exercise and education intervention for chronic low back pain.

【文献⑦】
Vibe Fersum K, et al.
Cognitive functional therapy in patients with non-specific chronic low back pain.

【文献⑧】
Kent P, et al.
Cognitive Functional Therapy implementation studies.