― やってはいけないのではなく、順番の問題 ―
ピラティスを続けている中で、
「股関節の奥が詰まる感じがする」
「動かすと引っかかるような違和感がある」
そんな感覚に不安を覚えたことはないでしょうか。
このとき多くの方が、
「もっと動かした方がいいのか」
「硬いから、もっと伸ばすべきなのか」
と、判断に迷います。
ですが、ここで大切なのは、
股関節が詰まる=やり方が間違っている
と、すぐに結論づけないことです。
股関節の詰まり感や違和感の多くは、
方法そのものではなく、
今の身体の状態と、動きを積み重ねる順番が合っていない
ことによって生じます。
この記事では、
股関節が「悪化した」と感じやすい人に共通する特徴を、
原因探しではなく、判断のための整理としてまとめていきます。

なぜ「股関節が詰まった」と感じるのか

股関節は、
身体の中でも自由度が高い球関節で、
大きな可動域と安定性の両立が求められる関節です。
その一方で、
動きの選択肢が多いため、
代償動作が起きても自覚しにくいという特徴があります。
たとえば、
股関節を動かしているつもりでも、
実際には骨盤や腰椎が先に動いていたり、
逆に深部で動きが止まってしまっていることがあります。
このような状態で動きを重ねると、
「動いているのに、どこか楽にならない」
「動かすほど、奥が重くなる」
といった感覚につながりやすくなります。
また、股関節の詰まり感は、
単なる柔軟性不足とは限らず、
動きの入り口・方向・力の入り方の影響を強く受けることが、
股関節痛に関する臨床レビューでも指摘されています【文献①】。
股関節が詰まりやすい人の特徴
以下に挙げるのは、
「悪化の原因」ではありません。
その状態で運動を進めると、判断を誤りやすい前提条件です。
① 可動域を広げることを優先しすぎている

・ストレッチや開脚を頑張っている
・可動域が広いほど良いと思っている
・詰まる感覚を「硬さの問題」だと捉えている
股関節の詰まり感は、
柔らかさの問題ではなく、
動きが入り始める位置や方向の問題であることがあります。
特に、股関節インピンジメントに関する研究では、
可動域の拡大そのものよりも、
どの方向に・どの順番で動くかが重要であることが示されています【文献②】。
② 股関節を動かす前に、身体の土台が整っていない

・体幹や骨盤の位置が安定しない
・立位や座位で姿勢が定まらない
・動き出しで迷いが生じる
股関節は、
身体全体の準備が整っていない状態では、
自由に動きにくい関節です。
体幹・骨盤・股関節の協調が乱れると、
股関節そのものの動きが制限され、
結果として詰まり感や引っかかりが生じやすくなります【文献③】。
③ 詰まりを避けようとして動きが歪んでいる

・詰まる方向を避けて腰を反らす
・左右差をごまかすように動いている
・違和感を感じる前から力が入ってしまう
このような代償動作が続くと、
股関節の動きはさらに分かりにくくなります。
「詰まらないように動く」つもりが、
結果的に動きの自由度を下げてしまうケースも少なくありません。
④ 不安や恐怖が動きの選択を左右している

・股関節を動かす前から身構えてしまう
・「壊れそう」というイメージが先に立つ
・正しい位置が分からず、迷いが続く
恐怖や警戒心は、
動作の選択やタイミングに影響します。
この心理的要因は、
股関節のように自由度が高い関節ほど、
症状の固定化に関与しやすいことが報告されています【文献④】。
股関節の詰まり感は、「広げる/ほぐす」で即決しない

股関節の詰まり感は、
「もっと柔らかくすればいい」
「動かせば解消する」
といった単純な判断では整理できません。
次のようなサインがある場合は、
自己判断で動かし続ける前に、
一度、状態を整理することが大切です。
- 特定の角度でだけ奥が引っかかる
- 可動域の終わりではなく、途中で詰まる
- 動かすほど自由度が下がる感覚がある
- ストレッチ後に重さや違和感が残る
これらは診断を示すものではありませんが、
判断を慎重にするための重要な材料になります【文献②】。
続けてよい人/一度整理した方がよい人

股関節に詰まり感があっても、
すぐに「続ける/やめる」を決める必要はありません。
判断の目安になるのは、
動かした後の変化と、安心感の方向です。
続けてよい可能性が高いサイン
・動かした後、詰まり感が一時的に軽くなる
・可動域の“端”より“途中”が楽になる
・動きへの怖さが少し減っている
・日を追うごとに迷いが減っている
一度整理した方がよいサイン
・回を重ねるほど詰まり感が強まる
・動かす前から身構える感覚が増す
・腰や膝への代償が大きくなっている
・「合っていないのでは」という不安が続く
後者に当てはまる場合、
必要なのは可動域を増やすことではなく、
動きの前提と順番の整理です。
これは形式の問題ではなく「判断の問題」

なお、股関節の詰まり感は、
マットかマシンピラティスか、
グループかパーソナルか、
といった形式の違いで決まることはほとんどありません。
重要なのは、
今の身体の状態に対して、どの環境やサポートが必要か
という判断です。
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ここまで読んで、
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【文献①】
Reiman MP, et al.
Hip pain and mobility deficits. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy.
【文献②】
Griffin DR, et al.
Femoroacetabular impingement syndrome.
British Journal of Sports Medicine.
【文献③】
Lewis CL, Sahrmann SA.
Movement impairment syndromes of the hip.
Physical Therapy.
【文献④】
Pincus T, et al.
Fear avoidance and musculoskeletal pain.
Pain.

