【ピラティスと運動療法】

こんにちは!からだ機能改善サロンwith代表の紙谷です。

今日は、ピラティスと運動療法についてのお話をしていこうと思います。

ピラティスは既に

「姿勢が整い、スタイルが良くなり、しなやかな身体が手に入るボディワーク」としてとても有名になりました。

健康な方からすると、「運動療法」という言葉自体、馴染みがあまりないかと思いますが。

実はピラティスは、医学的に処方される『運動療法』の一つでもあり、科学的根拠がたくさん示されているメソッドです。

実際、様々な症例に対して、ピラティスを治療アプローチの一つの手段として用い、課題の解決をサポートしてきました。

なぜ、運動療法としてもピラティスが優秀なのか。

その科学的根拠の一部をお伝えしていきます!

痛みに対するピラティスの科学的根拠

慢性疼痛診療ガイドライン2021の中で、

慢性的な痛みに対しての信頼性の高いアプローチについての記述があり、ピラティスはその中で2番目に位置しています

(ここでいうピラティスは主に体系化されたエクササイズとなります。指導者については、ピラティスに精通しているもの者と限られており、ヨガや太極拳・気功との優劣については『同列』というのが現在の立ち位置になります。)

一般的な運動というのは、分かりやすいイメージで言うといわゆる「ウォーキング」レベルの運動になります。

そして、慢性的な痛みに対して最も効果的であるとされているのが

「認知行動療法」と「運動療法」と「患者教育」を掛け合わせたアプローチ手法です。

分かりやすく言うと

・自身の「考え方」や「捉え方」を見つめる方法を学ぶこと

・運動をしながら、「考え方」や「捉え方」の変化を自覚すること

です。

もう少しかみ砕くと

「身体の状態」も「心の在り方」も大切ですよー

ということになります。

「なんだよ、ピラティス1番じゃないじゃん。」

と思うかもしれません。

しかし裏を返せば、

『慢性的な痛みはそれだけ複雑なもの』であるということが言えます。

だから

慢性的な痛みを抱えている方は

ピラティスのエクササイズだけを行うのではなく。

自身の心の状態や環境を見つめ直し、場合によっては変えていくこともとても大切な要素になりますね。

慢性腰痛に対して最も有益なプログラムの一つ

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35722759/

2022年に報告された、最も信頼性が高いとされるメタアナリシスの研究をまとめると

慢性腰痛に対して、その痛みと障害を改善させる最も有益なプログラムは、

(1) 週に少なくとも 1~ 2セッションのピラティスまたは筋力トレーニング

(2) コアベース、筋力、または心身のエクササイズの60 分未満のセッション。

(3) 3 ~ 9 週間のピラティスとコアベースのエクササイズのトレーニング プログラム

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35722759/

と報告されています。

「信頼性が高い」報告の重要な要素として、「母数が多い」が挙げられます。

それはつまり、慢性的な腰痛を持つたくさんの方に対して、

ピラティスが効果的な手段となりやすい。

ということを示しています。

(エクササイズの種類だけでなく、頻度や期間も生理学的な観点からとても大切なポイントです)

呼吸機能とピラティス

呼吸機能に対するピラティスの効果は最も信頼性が高く、多くの研究報告でその科学的根拠が認められています。

40~60分/回、3回/週、8~16 週間にわたってピラティスを実施
対象の健康状態に問わずピラティスが最大酸素摂取量を増加させる

Pilates Method Improves Cardiorespiratory Fitness: A Systematic Review and Meta-Analysis
J Clin Med. 2019 Oct 23;8(11):1761. doi: 10.3390/jcm8111761

最大酸素摂取量(VO2max)=呼吸機能と捉えていただいて構いません。

つまり、ピラティスは「呼吸を大切にし、活かすメソッド」ということになります。

精神状態とピラティス

高齢者には生活の質、睡眠の質、幸福度、うつ病、および気分状態の改善効果が。
若年者には抑うつ症状、不安、活力感、および疲労を改善する効果が認められた。

Effects of Pilates Training on Physiological and Psychological Health Parameters in Healthy Older Adults and in Older Adults With Clinical Conditions Over 55 Years: A Meta-Analytical Review
Published online 2021 Oct 25. doi: 10.3389/fneur.2021.72421

ピラティスには心理状態・精神状態を改善または向上させる効果もあることが報告されています。

いわゆる「マインドフルネス」の要素も兼ね備えているということになりますね。

姿勢とピラティス

週3回 50分/回のピラティスを行った群とストレッチ&160分/週の有酸素運動を行った群を比較

ピラティス群が立位重心偏移量、BBS(バランス評価)、握力をより優位に改善

Pilates exercise and postural balance in older adults: A systematic review and meta-analysis of randomized controled trials Complementary Therapies in MedicineVolume 48, January 2020 文献内より抜粋

『姿勢』に関して、多くの方が立っている姿勢や座位姿勢など、「静止した状態」をイメージされるかと思いますが。

実は「良い姿勢」を決めるのは静止した状態が大切なのではありません。

端から見たら静止しているように見えても、「呼吸」をしたり、「視線」が動いたり。

少し専門的に言うと「体性感覚」・「前庭感覚」・「視覚」から得られる情報を統合して。

人のからだは絶えず動き、それを五感で感じとり、常にバランスをとっています。

重心偏移量とは、「決められた一定の時間内で、重心がどのくらい動いているか」を測定したもの。

BBSは「振り向いたり」「立ち座り」をしたり「手を前方へリーチしたり」といった、動的なバランスを評価することに秀でた評価指標。

つまり、これらの数値が改善するということは

「いかなる状況においても、姿勢を保つ能力が高い」ことを示しています。

この研究報告は引用された文献の中の一つに過ぎませんが、

総括として「ピラティストレーニングは姿勢バランスに好ましい効果をもたらす」と述べられています。

ピラティスは万能ではない。

ここまでお話していると

「ピラティスってやっぱり万能じゃないか!」

となりますよね。笑

とにかくリハビリと相性がとてもよい

科学的根拠も蓄積されている優秀なメソッドであることは間違いありませんが。

withはピラティススタジオでもあり、「からだ機能改善サロン」なので。

次の投稿では、ピラティスの苦手な部分についてもちゃんと触れていきます。