腰痛を改善するためにピラティスを始めたものの、
「思ったより痛みが増した」「違和感が強くなった」と感じる人は少なくありません。
このようなケースが起きると、
「ピラティスが合わないのではないか」
「運動はやめたほうがいいのではないか」
と不安になるのは自然なことです。
ただし、まず知っておいてほしいのは、
ピラティスそのものが腰痛を悪化させる運動だというわけではない
という点です。
一方で、腰痛の状態や段階によっては、
運動の始め方や内容によって症状が悪化する可能性があることも、
医学的に指摘されています。
ピラティスで腰痛が悪化するケースは実際にあるのか?

結論から言うと、ピラティスで腰痛が悪化するケースは「あります」。
ただし、それには共通した条件があります。
慢性腰痛に対して運動療法は、多くの診療ガイドラインで推奨されています。
たとえば米国内科学会のガイドラインでは、
非侵襲的治療として運動療法が第一選択の一つとされています【文献①】。
しかし同時に、
すべての腰痛患者に同じ運動を行えばよいわけではない
という前提も明確に示されています。
腰痛の多くは「非特異的腰痛」と呼ばれ、
画像検査などで明確な原因が特定できない一方、
痛みの誘因や増悪因子は人によって大きく異なります。
この個別性を考慮せずに運動を行うと、
一時的あるいは継続的に症状が悪化するケースがあることは、
臨床的にも珍しいことではありません。
「腰痛は動かしたほうがいい」という考え方の落とし穴

「腰痛は動かしたほうがいい」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
実際、長期間の安静が腰痛の慢性化につながることは、
多くの研究で示されています【文献①】。
ただしこの言葉は、
どんな状態でも、どんな動きでも問題ない
という意味ではありません。
腰痛には、
侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、
さらに中枢性感作が関与する痛みなど、
異なるメカニズムが存在します【文献②】。
たとえば神経症状を伴うケースや、
炎症が強い時期に特定の動作を繰り返すことで、
症状が悪化する可能性があることも報告されています。
痛みの性質を考慮せずに「とにかく動かす」ことが、
結果として不調を長引かせてしまう場合もあります。
悪化しやすい人の特徴①:痛みの評価が不十分なまま始めている

ピラティスで腰痛が悪化しやすい人の特徴として、
まず挙げられるのが 運動前の評価が不十分なケース です。
・いつから痛みがあるのか
・どの動作で痛みが強くなるのか
・しびれや放散痛はないか
これらは、運動を始める前に確認すべき重要な情報です。
腰痛診療では、
運動療法を行う前に重篤な疾患や神経症状を除外する
スクリーニングの重要性が示されています【文献①】。
こうした評価を行わずに運動を開始すると、
本来避けるべき負荷が加わってしまう可能性があります。
悪化しやすい人の特徴②:安定性が必要な段階で動かしすぎている

慢性腰痛のある人では、
体幹筋群の活動タイミングや協調性が、
健常者と異なることが報告されています【文献③】。
このような状態では、
「大きく動かす」「柔軟性を高める」ことを優先すると、
腰部への負担が増えるケースがあります。
本来は
支えられる状態を作る → その上で動かす
という段階が必要な人も少なくありません。
段階を飛ばした運動は、
「正しい運動」であっても症状を悪化させる可能性があります。
悪化しやすい人の特徴③:過去に運動で失敗した経験がある

過去に
「運動をして痛みが悪化した」
という経験がある人も注意が必要です。
慢性腰痛では、
恐怖回避思考や不安といった心理社会的因子が、
痛みの持続に関与することが知られています【文献④】。
このような状態では、
身体の問題だけでなく、
「痛みを予測してしまうこと」自体が動作を硬くし、
結果的に腰への負担を高めることがあります。
運動内容だけでなく、
関わり方や説明の仕方が重要になる理由です。
それでもピラティスが有効になりやすい人の共通点

一方で、ピラティスが有効に働きやすい人には共通点があります。
・痛みの状態を評価した上で始めている
・その日の体調に応じて内容が調整されている
・できない動きを無理に求められていない
個別性を考慮した運動療法や、
専門家の監督下で行う運動は、
より良い結果につながりやすいことが示されています【文献③】。
腰痛の背景には、姿勢や日常動作の影響が関係しているケースも少なくありません。
ストレッチや運動を続けているのに姿勢が変わらない場合、
考え方そのものを整理する必要があることもあります。
▶︎ 姿勢改善がうまくいかない本当の理由|ストレッチや運動だけでは変わらないケース
始める前に確認してほしいポイント

ピラティスを始める前に、
次の点を一度確認してみてください。
・今の痛みは、動くとどう変化するか
・しびれや強い不安はないか
・状態を見ながら調整してもらえる環境か
これらは「向いていない」と決めつけるためのものではなく、
安全に続けるための判断材料 です。
腰痛に対してピラティスは、
適切に行われれば有効な選択肢の一つです。
ただし、状態に合わない形で始めてしまうと、
本来得られるはずの効果を感じにくくなることもあります。
慎重に始めたい人ほど、
「まず評価から行う」という選択肢があることを、
ぜひ知っておいてください。
津田沼で、評価から行うパーソナルピラティスをお探しの方は、
こちらのページをご覧ください。
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- Qaseem A, et al.
Noninvasive treatments for acute, subacute, and chronic low back pain.
Ann Intern Med. 2017. - Kosek E, et al.
Do we need a third mechanistic descriptor for chronic pain states?
Pain. 2016. - Hodges PW, et al.
Changes in motor control of the trunk muscles in low back pain.
Spine. 2003. - Vlaeyen JW, Linton SJ.
Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain.
Pain. 2000.

