歩いているときの「左右差」が気になる方へ
歩くときに、
- 片脚だけ疲れやすい
- 靴底の減り方が左右で違う
- 片側に体重が乗っている気がする
こうした左右差に気づくと、
「このまま運動して大丈夫かな」
「何かがおかしいのかな」
と不安になることがあります。
ただ、最初にお伝えしたいのは、
歩行の左右差があること自体は、珍しいことではないという点です。
左右差がある=異常、とは限らない

歩行研究では、測定や解析の簡略化のために「対称」を前提にしがちですが、実際には健常者(able-bodied)でも、左右が完全に同じように振る舞わない可能性が議論されています【文献①】。
また、健常若年者を対象にした研究では、インソール計測から得られる指標(gait-line)において、左右差の“参考域”が提示されています【文献②】。
ここで大切なのは、
- 左右差があること
- 左右差が「必ず問題」かどうか
は、同じではないということです。
歩行は「考えて行う動作」ではない

歩行は、日常動作の中でも特に自動化が強い動作です。
「右足はこう出して、次は左…」と、毎歩ごとに細かく考えている人はほとんどいません。
だからこそ、歩行の左右差を整理するときは、
“見た目の形”だけで良し悪しを決めないほうが、結果的に合理的です。
左右差が生まれる背景は、ひとつではない

歩行の左右差は、よく「片側が弱いから」と説明されがちですが、実際にはそれだけで決められないケースが多いです。
歩行の左右差を考えるときは、次のような視点が役立ちます。
1)左右で“役割”が分かれている可能性

歩行の左右差については、条件によって左右が異なる役割(例:支持・推進・制御)を担うという「機能的非対称」という見方も示されています【文献③】。
これは「左右差=悪」と決めつけるのではなく、
左右差が“その人の戦略として成立している”可能性を残す視点です。
2)感覚の違いが、動きの選択を変える

左右で、足裏の接地感や体重の乗りやすさが少し違うだけでも、
身体は無意識に「やりやすい動き」を選びます。
この選択の積み重ねが、
結果として歩行の左右差として現れていることがあります。
3)「揃えよう」とするほど不自然になることもある

左右差が気になると、体重配分や足の出し方を“揃えよう”と頑張る方がいます。
ただ歩行は自動化が強い動作なので、意識の方向によっては、かえって不自然さが増える場合もあります。
(だからこそ、矯正より先に“整理”が必要になります。)
左右差を「直す」前に、整理しておきたい判断材料

歩行に左右差があったとき、重要なのは
- 左右差が“ある”こと
- 左右差が“困りごとにつながっている”こと
を分けて考えることです。
たとえば、
- 痛みがある/ない
- 疲労が偏っている
- 立位や片脚立ちでも違和感が出る
- そもそも「左右差を感じ取れているか」
こうした要素で、意味合いが変わります。
文献②が示すように、健常者にも左右差の参考域がある一方で【文献②】、
「どこからが問題か」は、単純に数値だけでは決めにくい面があります。
まとめ|左右差は“エラー”ではなく、整理の出発点

歩行の左右差は、
- 健常者でも観察され得る【文献①】【文献②】
- 条件によっては左右で役割が分かれる、という見方もある【文献③】
このため、左右差があるだけで「直さなきゃ」と急ぐ必要はありません。
大切なのは、
左右差を“悪者”にする前に、判断材料として整理すること。
その整理ができると、
今の身体にとって必要なのが「矯正」なのか、
それとも「別の優先事項」なのかが見えやすくなります。
是非一つの参考にしてみてください。
「安定している」とはどういう状態なのかを、
姿勢・感覚・動きの視点から整理した記事はこちらです。
津田沼で、評価から行うパーソナルピラティスをお探しの方は、
こちらのページをご覧ください。
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【文献①】
Sadeghi H, Allard P, Prince F, Labelle H.
Gait Posture. 2000 Sep;12(1):34-45.
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10996295/
【文献②】
Jeleń P, Wit A, Dudziński K, Nolan L.
Dyn Med. 2008 Dec 19:7:17.
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19099568/
【文献③】
Gregg RD, Dhaher YY, Degani A, Lynch KM.
IEEE Trans Biomed Eng. 2012 May;59(5):1310-8.
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22328168/

