~ 「鳴る=悪い」と思っていませんか? ~
首を動かしたときに、
「ポキッ」
「ボキッ」
「コリコリ」
と音が鳴る。
そして多くの人が、
- 骨がズレているのでは?
- 将来、変形するのでは?
- 整体で鳴らしてもらった方がいいのでは?
と不安になります。
「首 ポキポキ 危険」「ボキボキ整体 危ない」と検索している方もいるかもしれません。
しかしまず整理すべきことは、
音だけでは安全か危険かは判断できない
という事実です。
この記事では、
✔ 音の正体
✔ ポキポキ整体の位置づけ
✔ 本当に注意すべきサイン
✔ 続けてよい人/立ち止まるべき人
を、医学的根拠をもとに整理します。
首が鳴るのはなぜ?(まず結論)

多くの「ポキッ」という音は、
関節内キャビテーションと考えられています。
リアルタイムMRI研究では、関節が鳴る瞬間に関節内に気泡が形成される様子が観察されました【論文①】。
これは、
- 骨がズレた音
- 骨同士が擦れた音
とは限らない、ということを意味します。
音は1種類ではない
首の音には複数の可能性があります。
① 関節内キャビテーション(ポキッ)
急な関節牽引による圧変化【論文①】。
② 腱・靭帯の滑走音(コリコリ)
組織が骨をまたぐときのスナップ。
③ 加齢変化による摩擦音(ジャリ)
関節面の変化。
重要なのは、
音の種類だけでは判断できない
という点です。
首が鳴る=危険?悪化する?
現在の医学的整理では、
- 音そのものが関節破壊を起こす明確な証拠はない
- しかし「強く鳴らしにいく行為」は別問題
とされています。
ここで重要なのは、
自然に鳴る現象 と
意図的に鳴らしにいく行為 の区別です。
首を自分で鳴らすのは危険?強くひねるリスク

頸部への急速なスラスト(強いひねり)と
椎骨動脈解離・頸動脈解離との関連は、症例報告や疫学研究で示唆されています【論文②】【論文③】。
発生頻度は非常に低いと推定されていますが、因果関係の完全な証明は困難であり、医学的には「リスクが否定できない」と整理されています。
そのため、
- 勢いよくひねる
- 反復して習慣化する
行為は、安全側に倒す判断として推奨されません。
ポキポキ整体・ボキボキ整体は危ない?どう判断する?

首を大きくひねって「ボキッ」と鳴らす施術は、
一般に頸部マニピュレーションと呼ばれます。
この技術が即座に危険だと断定することはできません。
一方で、
頸部への急速スラストと血管解離との関連は
示唆されています【論文②】【論文③】。
重要なのは、
✔ 誰に
✔ どの状態で
✔ どの頻度で
✔ どの強度で
行われるかです。
そして、
鳴らすこと自体が目的になっている場合は、本質的な改善とは言えません。
首の問題は、
- 呼吸
- 胸郭
- 体幹の安定
- 姿勢環境
といった分担構造が関与します。
施術を受ける場合も、
「なぜ首に負担が集まっているのか」
まで説明があるかどうかが、判断材料になります。
立ち止まるべきサイン

音ではなく、症状のセットで判断します。
- しびれ
- 脱力
- めまい
- 視覚異常
- 強い頭痛
- 外傷後に出現
これらの症状がある場合、「音の問題」ではなく神経や血管の評価が優先されます。
なぜ鳴らしたくなるのか?(構造の問題)

多くのケースで、
- 胸郭の硬さ
- 呼吸の浅さ
- デスクワークによる前方頭位
- 体幹の支え不足
が背景にあります。
デスクワークと頸部痛の関連は
作業環境や姿勢因子の関与が報告されています【論文④】。
首は「微調整役」です。
本来分担すべき部位が働かないと、
首が過剰に動き、一時的な解放感を求めて鳴らしたくなります。
しかしそれは構造改善ではありません。
首の問題を「音」ではなく「構造」で整理したい方は、こちらで全体像をまとめています。
続けてよい人/整理した方がよい人
ここまで読んで、
「自分は大丈夫なのか、それとも立ち止まるべきなのか」
がまだ曖昧な場合は、音ではなく“今の状態”で整理します。
首の問題は、音ではなく
✔ 症状
✔ 頻度
✔ 背景構造
の組み合わせで判断します。
比較的問題になりにくいケース
- 痛みなし
- 神経症状なし
- 無理に鳴らしていない
- たまに自然に鳴る程度
一度整理した方がよいケース
- 鳴らさないと違和感が取れない
- 回数が増えている
- 痛みが慢性化している
- 強くひねる習慣がある
迷う場合は、
音ではなく背景構造で判断する
ことが重要です。
まとめ
首がポキポキ鳴ること自体は、
多くの場合キャビテーション現象であり【論文①】、
直ちに危険とは言えません。
しかし、
- 強い自己スラスト
- 神経症状
- めまい・頭痛
がある場合は評価優先【論文②】【論文③】。
そして最も重要なのは、
なぜ鳴らしたくなるのか。
首単体ではなく、
呼吸・胸郭・体幹を含めた構造で整理することが、本質的な改善につながります。
【論文①】Kawchuk GN, et al. Real-time visualization of joint cavitation. PLoS ONE. 2015.
【論文②】Rubinstein SM, et al. Risk of cervical artery dissection after chiropractic care. Spine. 2008.
【論文③】Church EW, et al. Cervical artery dissection and manipulation: systematic review and meta-analysis. Cureus. 2016.
【論文④】Côté P, et al. The burden and determinants of neck pain in workers: systematic review. Eur Spine J. 2008.

