― やってはいけないのではなく、順番の問題 ―
首の違和感やつらさを改善したくてピラティスを始めたのに、
「終わったあと、首が重い」
「動くたびに首に力が入る感じが残る」
そんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
このとき多くの方が、
「自分にはピラティスが合っていないのでは」
「首に運動は危険なのでは」
と不安になります。
ですが、ここで一度立ち止まって考えてほしいのは、
ピラティスそのものが悪いと決めつける必要はない、という点です。
首のつらさが強まったように感じるケースの多くは、
やり方の問題ではなく、
今の身体の状態と、取り組む順番が合っていない
ことによって起こります。
この記事では、
「首がつらくなった」と感じやすい人に共通する特徴を、
原因探しではなく、判断のための整理としてまとめていきます。

なぜ「首がつらくなった」と感じるのか

首は、頭の重さを支えながら、
視線や呼吸、姿勢の影響を強く受ける部位です。
そのため、たとえ負荷が強くなくても、
身体が選べる動きの選択肢が少ない状態で運動を重ねると、
首が代わりに働き続けてしまいます。
結果として、
「動いたのに楽にならない」
「終わったあと、首の緊張が抜けない」
といった感覚につながります。
また、首のつらさは、
必ずしも筋肉や関節の状態だけで決まるものではありません。
不安や警戒、疲労の蓄積などによって、
痛みや違和感の感じ方そのものが変化することも知られています【文献④】。
ここで大切なのは、
「痛いかどうか」だけで判断するのではなく、
動いたあと、身体がどの方向に変化しているかを見ることです。
この考え方は、頸部痛に対する臨床ガイドラインでも重視されています【文献①】。
首がつらくなりやすい人の特徴
以下に挙げるのは、
「悪化の原因」ではありません。
その状態で運動を進めると、判断を誤りやすい前提条件です。
① 頭の重さを首で支えている

・姿勢を正そうとすると首が疲れる
・背中や体幹を使っている感覚が分かりにくい
・動作中、首に力が入り続けている
頭の重さは、首だけで支えるものではありません。
体幹や呼吸と連動して分散されることで、
首への負担は軽減されます。
この感覚がつかめない状態では、
無意識に首が主役となり、
緊張が抜けにくくなります。
② 視線・目線が固定されている

・動いていても視線が一点に固まりやすい
・目の疲れと首のつらさが同時に出る
・回旋やうつむき動作で違和感が強まる
首の動きは、視線や目の使い方と密接に関係します。
視線が固定されると、
首は細かな調整を続けることになり、
負担が蓄積しやすくなります。
頸部痛と頭部前方位、視線の影響については、
複数の研究で関連が示唆されています【文献③】。
③ 「安定=固めること」になっている

・首や肩を常に力で固定している
・お腹や背中を固め続けている
・呼吸が浅くなっている自覚がある
安定を「固めること」だと捉えていると、
身体は動きながら整うのではなく、
固めたまま動こうとする状態になります。
このとき首は、
姿勢を保つための支柱のように使われ、
結果としてつらさが増していきます。
近年の研究では、
頸部痛に対しては過剰な固定よりも、
より少ない力でコントロールする能力(運動制御)
が重要である可能性が示されています【文献②】。
④ 「正しくやらなきゃ」という意識が強い

・失敗したくない
・首に違和感が出るのが怖い
・常に正解を探してしまう
この状態では、
身体は安全を優先するモードに入りやすく、
緊張が抜けにくくなります。
痛みに対する恐怖や警戒が、
動作の硬さや症状の長期化に関与し得ることは、
慢性痛の研究でも指摘されています【文献⑤】。
「頑張っているのに楽にならない」場合、
必要なのはさらに努力することではなく、
判断の順番を見直すことです。
首の症状は、判断をより慎重にする必要があります

首は構造上、代償が起きやすく、
判断を誤ったときの影響が他部位より大きい領域です。
そのため、次のようなサインが見られる場合は、
「運動で様子を見る」という判断を一度止め、
自己判断を避けることが重要になります。
- しびれや感覚異常が、腕や手に広がる
- 力が入りにくい、細かな動作が不安定になる
- 首の動きと関連して、めまいやふらつき、視覚の違和感が出る
- 安静時でも強い痛みが続き、変動が少ない
これらは診断を示すものではありませんが、
運動を続けるかどうかを考える際の重要な判断材料となります【文献①】。
続けてよい人/一度整理した方がよい人

首に違和感があるからといって、
すぐに「続けるべきか」「やめるべきか」を
決める必要はありません。
判断の目安になるのは、
運動後の変化の方向です。
続けてよい可能性が高いサイン
・終わったあと、首や肩が軽くなる
・呼吸が入りやすくなる
・翌日に残っても、回復が早い
・動きに余白が生まれる感覚がある
一度整理した方がよいサイン
・回を重ねるほど、首の緊張が強まる
・力を抜こうとするほど不安になる
・違和感に「怖さ」が伴う
・運動後に一貫して悪化する
後者に当てはまる場合、
いま必要なのは、
「もっと頑張ること」ではなく、
身体の状態を整理し、順番を決め直すことです。
これは形式の問題ではなく「判断の問題」

なお、この首の違和感は、
マットかマシンか、
グループかパーソナルか、
といった形式の問題ではないケースが多く見られます。
重要なのは、
今の身体の状態に対して、どの環境やサポートが必要か
という判断です。
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【文献①】
Blanpied PR, et al.
Neck Pain: Revision 2017 Clinical Practice Guidelines.
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2017.
【文献②】
Falla D, et al.
Muscle dysfunction in cervical spine pain.
Journal of Electromyography and Kinesiology.
【文献③】
Szeto GPY, et al.
Head posture and neck pain.
Manual Therapy.
【文献④】
Curatolo M, et al.
Central Sensitization and Pain.
Pain Reports. 2023.
【文献⑤】
Vlaeyen JWS, Linton SJ.
Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain.
Pain. 2000.

