― やってはいけないのではなく、順番の問題 ―
肩こりを改善したくてピラティスを始めたのに、
「終わったあと、首や肩が重い」
「正しくやろうとするほど力が入ってしまう」
そんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
このとき多くの方が、
「自分にはピラティスが合っていないのでは」
「やり方が間違っているのでは」
と不安になります。
ですが、ここで一度立ち止まって考えてほしいのは、
ピラティスそのものが悪いと決めつける必要はない、という点です。
肩こりが悪化したように感じるケースの多くは、
やり方の問題ではなく、
今の身体の状態と、取り組む順番が合っていない
ことによって起こります。
この記事では、
「肩こりが悪化した」と感じやすい人に共通する特徴を、
原因探しではなく、判断のための整理としてまとめていきます。

なぜ「悪化した」と感じるのか

肩こりは、肩の筋肉だけの問題ではありません。
首、胸郭、呼吸、感覚、力みといった要素が重なり合って生じます。
そのため、たとえ負荷が強くなくても、
身体が選べる動きの選択肢が少ない状態で運動を重ねると、
首や肩の筋肉が代わりに働き続けてしまいます。
結果として、
「動いたのに軽くならない」
「終わったあと、張り付くような重さが残る」
といった感覚につながります。
また、痛みやつらさは、
必ずしも組織の状態だけで決まるものではありません。
不安や警戒、疲労の蓄積などによって、
痛みの感じ方そのものが変化することも知られています【文献③】。
ここで大切なのは、
「痛いかどうか」だけで判断するのではなく、
動いたあと、身体がどの方向に変化しているかを見ることです。
この考え方は、頸部痛に対する国際的な臨床ガイドラインでも重視されています【文献①】。
肩こりが悪化しやすい人の特徴
以下に挙げるのは、
「悪化の原因」ではありません。
その状態で運動を進めると、判断を誤りやすい前提条件です。
① 感覚が入りにくい

・背中を使えと言われても、よく分からない
・気づくと肩や首ばかりが疲れている
・力を抜こうとすると不安になる
この状態では、
動きをうまくコントロールできない分、
無意識に力で形を作ろうとする方向に傾きやすくなります。
その結果、
首や肩が「支える役割」を担い続け、
緊張が抜けにくくなります。
ここで見るべきなのは、
「効いている感じ」よりも、
どこに負担が集まっているかです。
頸部痛の評価においても、主観的な感覚や運動後の変化は重要な判断材料とされています【文献①】。
② 左右差があるのに、自覚できない

・片側の肩だけ張る
・動かしやすさに差がある気がする
・でも、どちらが違うのかは言葉にできない
左右差があっても自覚できないと、
身体は無意識に「楽な側」で動きを成立させます。
すると、
特定の側の首や肩に負担が集中し、
「頑張るほど、片側だけつらくなる」
という状態が起こりやすくなります。
この場合、必要なのは努力ではなく、
左右差を判断できるだけの材料を整理することです。
ガイドラインにおいても、左右差や運動制御の評価は重要視されています【文献①】。
③ 「安定=固めること」になっている

・お腹や肩を常に力で固めている
・肩甲骨を下げて固定し続けている
・呼吸が浅くなっている自覚がある
安定を「固めること」だと捉えていると、
身体は動きながら整うのではなく、
固めたまま動こうとする状態になります。
このとき首や肩は、
固定を維持するために働き続け、
結果としてつらさが増していきます。
近年の研究では、
頸部痛に対しては過剰な固定よりも、
より少ない力でコントロールできる能力(モーターコントロール)
を高めることが有効である可能性が示されています【文献②】。
④ 「正しくやらなきゃ」という意識が強い

・失敗したくない
・痛みが出るのが怖い
・常に正解を探してしまう
この状態では、
身体は安全を優先するモードに入りやすく、
呼吸が浅くなったり、緊張が抜けにくくなります。
痛みに対する恐怖や回避行動が、
症状の長期化や活動量の低下に関与し得ることは、
慢性痛に関する研究でも繰り返し指摘されています【文献④】。
「頑張っているのに楽にならない」場合、
必要なのはさらに努力することではなく、
判断の順番を見直すことです。
続けてよい人/一度整理した方がよい人

肩こりがあるからといって、
すぐに「続けるべきか」「やめるべきか」を
決める必要はありません。
判断の目安になるのは、
運動後の変化の方向です。
続けてよい可能性が高いサイン
・終わったあと、肩や首が軽くなる
・呼吸が入りやすくなる
・翌日に残っても、回復が早い
・頑張った感より、余白が増える感覚がある
一度整理した方がよいサイン
・回を重ねるほど、重さや張りが増える
・首や肩に力が入った状態が続く
・正しくやろうとするほど苦しくなる
・つらさに「怖さ」が伴う
後者に当てはまる場合、
いま必要なのは、
「もっと頑張ること」ではなく、
身体の状態を整理し、順番を決め直すことです。
この考え方は、頸部痛の臨床ガイドラインにおける
「評価→判断→介入」という流れとも一致しています【文献①】。
これは形式の問題ではなく「判断の問題」

なお、この肩こりの違和感は、
マットかマシンか、
グループかパーソナルか、
といった形式の問題ではないケースが多く見られます。
重要なのは、
今の身体の状態に対して、どの環境やサポートが必要か
という判断です。
是非、一つの参考にしてみてください。
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ここまで読んで、
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【文献①】
Blanpied PR, et al.
Neck Pain: Revision 2017 Clinical Practice Guidelines.
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2017.
【文献②】
Tsiringakis G, et al.
Motor control training of deep neck flexors with pressure biofeedback improves pain and disability in patients with neck pain: A systematic review and meta-analysis.
Musculoskeletal Science and Practice. 2020.
【文献③】
Curatolo M, et al.
Central Sensitization and Pain: Pathophysiologic and Clinical Considerations.
Pain Reports. 2023.
【文献④】
Vlaeyen JWS, Linton SJ.
Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain: A state of the art.
Pain. 2000.
Leeuw M, et al.
The fear-avoidance model of musculoskeletal pain: current state of scientific evidence.
Journal of Behavioral Medicine. 2007.

