左右差を感じようとしても分からないのは何故?|感覚と神経の視点から整理する

左右差を感じ取ろうとしても分からず戸惑っている状態を表したイラスト
身体の左右差を意識しようとして分からなくなっている様子を示したイラスト

左右差を意識しようとして、戸惑ったことはありませんか?

「左右均等に立ちましょう」
「どちらに体重がかかっているか感じてみてください」

こうした言葉を聞いたことがあっても、
実際には

  • 右か左かよく分からない
  • 何が違うのか判断できない
  • 感じようとすると余計に混乱する

という経験をする人は少なくありません。

そして次に浮かぶのが、
「自分は感覚が鈍いのではないか」
「ちゃんと意識できていないのではないか」
という不安です。

ですが、左右差を感じ取れないこと自体は、決して不自然なことではありません。


左右差を「感じる」ことは、思っているより簡単ではない

身体の左右差を感覚として捉えることが難しい状態を表したイラスト

左右差は、
「集中すれば分かるもの」
「意識すればはっきりするもの」
と考えられがちです。

しかし、身体の感覚は
努力や集中だけで精度が上がるものではありません。

そもそも、私たちが感じている身体の位置や重さは、
非常に多くの情報が統合された結果として生まれています。


身体の位置や重さは、どこで感じ取っているのか

筋肉や関節、神経の情報が統合されて身体感覚が生まれる様子を示した図

筋肉や関節だけで感じているわけではない

身体の位置や動きの感覚は、
筋肉・関節・腱・皮膚などからの情報が
神経を通して脳に送られ、統合されることで生まれます。

この仕組みは 固有感覚 と呼ばれ、
「今、自分の身体がどこにあるか」を把握するための重要な感覚です。

ただし、固有感覚は
常に正確に働くわけではありません。

総説論文では、
人が「正確に感じているつもり」でも、
実際の身体位置とはズレが生じることがあると報告されています【文献①】。


「感じているつもり」と実際のズレ

このズレは、能力の問題ではありません。
神経系の特性によるものです。

身体感覚は、
末梢(筋や関節)だけでなく、
脳内で作られる身体のイメージ(ボディマップ) にも大きく依存します【文献②】。

そのため、左右で

  • 使われてきた頻度
  • 経験
  • 過去のケガや不安

が違えば、
左右差の「感じやすさ」自体が異なっていても不思議ではありません。


左右差が分かりにくくなる理由はいくつかある

左右で身体の使われ方や感覚の解像度が異なる様子を表したイラスト

左右で使われてきた経験が違う

利き足・利き手の影響や、
日常生活での動作の偏りは、
長い時間をかけて脳内の身体イメージに影響します。

その結果、
左右で感覚の解像度が異なり、
「違いを感じにくい側」が生まれることがあります。


身体の感覚に意識を向けすぎることで分かりにくくなっている状態を示したイラスト

注意を向ければ分かるとは限らない

「もっと感じよう」
「意識を集中しよう」

こうした指示は一見正しそうに聞こえますが、
研究では、内部感覚に過剰に注意を向けることで、
かえって感覚や動きが不安定になる場合がある
ことが示されています【文献③】。

つまり、
感じられないのは努力不足ではなく、
意識の向け方が合っていない可能性もあるのです。


痛みや不安によって身体感覚が変化し防御的になっている状態を表したイラスト

痛みや不安があると、感覚は変わりやすい

痛みや不安、過去のつらい経験があると、
身体は無意識のうちに防御的になります。

慢性的な痛みを持つ人では、
身体イメージや触覚、位置感覚が歪むことが報告されています【文献④】。

この場合、
左右差が分かりにくいのは、
身体が自分を守ろうとしている反応とも考えられます。


「感じられない状態」で無理に修正しなくていい

左右差を感じられないまま、

  • 均等にしようとする
  • 無理に整えようとする

こうした試みは、
混乱や力み、不安を強めてしまうことがあります。

大切なのは、
「左右差があるかどうか」よりも、
今は感覚を整理できる状態かどうかを見極めることです。


左右差を考えるときの整理の視点

左右差を無理に修正せず身体の状態を整理している様子を示したイラスト
  • どんな場面で分かりにくくなるか
  • 立っているときか、歩いているときか
  • 疲れているときか、余裕があるときか

左右差は、
状態によって感じやすさが変わることも多く、
一度で判断する必要はありません。


まとめ|感じられないことも、身体からのサイン

左右差を感じられないことを身体からのサインとして受け止めている様子を表したイラスト

左右差を感じられないのは、
感覚が鈍いからでも、努力が足りないからでもありません。

感覚には、
神経の特性、経験、安心感が深く関わっています。

無理に修正しようとする前に、
今は感じ取れる状態かどうかを整理すること。
それ自体が、身体と向き合う大切な一歩になります。

「安定している」とはどういう状態なのかを、
姿勢・感覚・動きの視点から整理した記事はこちらです。

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【文献①】Proske U, Gandevia SC.
The proprioceptive senses: their roles in signaling body shape, body position and movement.
Physiological Reviews. 2012.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23073629/

【文献②】Naito E.
Sensing limb movements in the motor cortex: how humans sense limb movement.
Journal of Neurophysiology. 2004.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14987450/

【文献③】Wulf G.
Attentional focus and motor learning: a review of 15 years.
Human Movement Science. 2013.
https://doi.org/10.1080/1750984X.2012.723728

【文献④】Moseley GL.
I can’t find it! Distorted body image and tactile dysfunction in patients with chronic pain.
Pain. 2008.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18786763/